大きな勘違いから、一晩明けた次の日。

佐和彦はスキップしながら、邪馬台国の一角にある、公民館に現れた。

その公民館の中からは、なにやら話し声が、聞こえてくる。

「ふふ、早速婚礼の儀式の打ち合わせか?いいことだ!」

佐和彦は、入り口の前で、肩を震わせ、笑い始めた。

「さ、佐和彦様…」

その様子を、通りがかった凛が見ていたが、あまりの近づきがたい雰囲気に、そそくさと立ち去っていった。

“バサ!”

「やあ、みんな今日も元気かい!?」

勢いよく、入り口の布をめくる佐和彦。その、妙に気合が入った声に、公民館が一瞬静まり返った。

「おや、佐和彦様ではないですか。一体、どうなさいましたか?」

部屋の中心にいた餅冶が、最初に立ち上がって、笑顔で佐和彦に声を掛けた。

「なんだ、餅冶じゃないか。それに、右豪と左豪まで。一体、何をしているのだ?」

わざとらしく、部屋の中を見渡す佐和彦。その表情は、何かを期待しているように、ニヤニヤしている。

「は、はい。実は、例の件で打ち合わせをしておりまして。」

「例の件?ああ!婚礼の儀式のことだな!それはご苦労。」

佐和彦は、わざとらしく驚くと、ズカズカと三人の間に割り込んだ。

「さて、どこまで(俺と卑弥呼様の婚礼の)話は進んでいるのかな?」

「あ、はい。それ(稚武彦様と凪様のご婚礼)については、佐和彦様にも、お話しすることは出来ません。」

右豪が、申し訳なさそうに、佐和彦に答えた。

(俺にも話すことが出来ないだと?フフフ。当日に、俺を驚かせようという魂胆だな?いいことだ!)

「フフフ、そうか!それならば仕方あるまい!では、期待しているぞ!」

「え、ええ。ぜひ、期待していてください。」

妙に気合の入っている佐和彦に、三人は苦笑いして答えた。

「邪魔したな!さらばだ!」

佐和彦は、キラッと歯を輝かせながら、公民館を後にした。

「佐和彦様、そんなに稚武彦様が、ご結婚されることが、嬉しいのかな?」

佐和彦が去った後、餅冶がポツリとつぶやいた。

「ああ。あのお二人は、兄弟のように育ってきたと聞くからな。まるで、自分の事のように嬉しいのだろう。」

実際は、自分のことだと思って大喜びしている佐和彦であるが、そんな勘違いをしているとは、全く気付いていない三人。

「そうだな。それじゃあ、我々もその期待にこたえて、盛大な婚礼の儀を行うとしよう!」

「お〜!!!!!」

そんな三人の思いを知らない佐和彦は、なぜかスキップをしながら、卑弥呼のいる巫女の神殿へと向かっていた。

「さあ、我が嫁となる卑弥呼様…いや、嫁になるのに、“様”はおかしいな。よし、卑弥呼に会いに行くぞ!」

期待に胸を膨らませる佐和彦。その夢が覚めるのは、いつのことなのだろうか・・・