1425年の春。

とある田園の片隅にある一軒家の窓から、天を眺めながらため息をつく少女の姿があった。

「はぁ〜…ヴォークルールまでって、どうやって行けばよかったかしら?」

それは、緋の神?からお告げを聞いたジャンヌであった。

ジャンヌは、ヴォークルールへ向かう決意をしたものの、方向がわからないためまだ家にいた。

「緋の神様から、場所をきちんと聞いておけばよかったわ。」

ジャンヌは窓から離れると、テーブルの上においてあるカップを手に取った。

「あ、そうだわ。確か“緋の神”って叫んだら、現れるんだったわね。」

一息ついたジャンヌが、緋の神の言葉を思い出した。

さっそく外へ飛び出したジャンヌは、天に向かって大声で叫んだ。

「緋の神〜!」

農作業をしていた人々が、一斉に怪しい目でジャンヌの方を向いた。

「あら?今何か呼ぶ声が聞こえたけど…」

こんがりと焼けたトーストに、ハチミツを塗っていた緋の神は、ハッとその手を止めた。

「卑弥呼、どうした?」

ハチミツの入っている壷を抱えていた熊が、緋の神=卑弥呼に声を掛けた。

「あ、プーさんごめん。なんだか私を呼ぶ声が聞こえたものだから。」

「呼ぶ声?ああ。もしかして、この前話していた、ジャンヌとかいう娘じゃないのか?」

「ジャンヌ?あ、ああ!大変、すぐに行かないと!あ〜、でもせっかくのトーストが〜…」

卑弥呼は残念そうに、おいしそうな香りを漂わせているトーストに目を移した。

「そうだな。俺の特製のハチミツも、もったいないしな。そうだ、あいつが来る頃じゃないか?」

「あいつ?」

プーさんがポンッと手を叩くが、卑弥呼には誰のことなのか、検討がつかなかった。

すると…

“ぼうや〜♪よいこ…♪”

どこからともなく、著作権に引っ掛かりそうな歌声が聞こえてきた。

「こ、この歌声は、佐和彦!?なんていいタイミングで現れるの!」

卑弥呼の視線の先には、雲の隙間を抜け、龍鷹に乗ってデンデン太鼓を振っている佐和彦の姿が目に映った。