「中村さん、お待たせしました。」
俺が椅子に座って大内の姿を探していると、鈴木がおにぎりとフランクフルトを持って戻ってきた。
「あ、ああ。じゃあ、次は俺が買ってくるよ。」
大内を見つけられなかった俺は、鈴木に聞こえないように舌打ちをして立ち上がった。
「僕はこれだけですけど、ラーメンとかもありましたよ。」
「そうなんだ。ありがとう。」
立ち上がった俺に、鈴木はおにぎりを一口食べながら、俺に教えてくれた。
鈴木の言うとおり、店はいくつもあった。ラーメンにから揚げ、ポテトにドーナツ。
ポテトとドーナツは、後から食べることにして、先にラーメンとおにぎり、から揚げを食べよう。
と、ここで俺はあることを思い出した。
「アイスはどこだ?」
大内達は、有名なアイスクリーム屋の話をしていたんだった。
ということは、アイス屋の周辺を探せばいいんだ。
俺は、ラーメンを受け取り、から揚げ屋に向かいながらアイス屋を探した。
「あった…」
探すまでもなかった。アイス屋は、玄関前の駐車場にあったのだ。
バスの中に店を構えていたため、開店するまで気づかなかっただけである。
なんとも間抜けな話である。
から揚げを買いながら、俺はそのバスの周辺を見てみた。
いた。
路肩に大内と江藤が座っているのが見えたのだ。
二人はアイスを片手に、なにやら談笑しているようだ。
俺はホッと安心した。
…なぜ安心しなければならないんだ…
自分の行動に疑問を持った俺は、さっさとテーブルに戻る。
「どうしたんですか?ムスッとして。」
鈴木が、キョトンとして尋ねる。
どうやら俺は、機嫌が悪そうに見えたらしい。
「い、いや。ちょっとお腹が減りすぎてね。」
まるで子どものような言い訳をした俺は、ささっと椅子に座ってラーメンを食べ始めた。
早く食べて、後藤と交代しなければ。
俺は急いでラーメンとから揚げを食べ終え、すぐに立ち上がった。
「は、早いですね。」
鈴木はまだ、おにぎりを食べている。
「ああ。後藤さんと交代しなくちゃいけないからな。ゆっくり食べていてくれ。」
少々冷たい気もしたが、今はこのイライラをなんとかしたい。
俺はそういうと、足早に中へ入っていった。