「ああ…もう朝か…後数日で無職だな…」
不安と焦燥にかられながら目を覚ました俺は、布団を乱雑に跳ねのけると、アパートのドアを開け、郵便受けに入っている新聞を手にした。
部屋に戻り、チラシを外して新聞を開く。
「…面白くない…」
様々な記事に目を通すが、モヤモヤとした気分では、全く頭に入らない。
俺は新聞をたたむと、テーブルの上に置いたチラシに目をやった。
「そういえば、もう食材が少なくなっていたな。」
スーパーのチラシだけを抜き取ろうと、パラパラとめくると、一枚の小さなチラシで手が止まった。
そのチラシは、他のチラシとは違い、安っぽい紙を使っているようだ。
「なんだ?このチラシは。」
その、A4サイズのチラシを手に取ると、そこには今の俺にとって、一番必要なことが記載されていた。
”職員募集”
大きな文字で書かれたそのチラシに、俺は興味と期待を抱いた。
「職員募集か…何の仕事だ?」
スーパーのチラシの事など、すっかり頭から消えた俺は、そのチラシをじっくりと見始めた。
「障害者の通所施設の介護職員…?障害…者か…」
保育士の資格を取るために、障害に関する勉強もしたことはあるのだが、自分の仕事にしたいとまでは思わず、今まで障害関係の仕事に就こうとは、考えたことがなかった。
「保育士にこだわらなくてもいいもんな。」
俺は、そのチラシに記載されている電話番号に、早速電話してみた。
「はい、あけぼの作業所の林です。」
数回コール音がなった後、林と名乗った女性が、電話口に出た。
「あの、職員募集のチラシを見たのですが、少し質問したくて…」
「ああ、そうですか!一体どんなことを?」
俺は、仕事の内容や、給与のことなどを尋ねた。
「他にご質問はありますか?」
一通り聞いた後、林が尋ねた。
「いいえ、聞きたかったのはそれだけでしたので、大丈夫です。」
内容は、障害者と共に、お菓子を作る仕事。給与は…福祉関係の仕事では、まあましな方かもしれない。
俺は、少し考えようと思い、電話を切ろうとしたが…
「じゃあ、明後日面接に来てください。」
林は、とんでもないことを口にした。
「え?あの、まだ検討したいのですが…?」
俺は驚いた。単に質問の電話を入れただけなのに、いきなり面接?
もしかして、かなり急いでいるのだろうか?
「実際見ていただいたほうが、わかりやすいと思いますし。見学を兼ねて、面接をしたいと思います。」
思わぬところから、トントン拍子に話が進んで行くこの状況に、俺は少々戸惑っていた。